山梨県の子ども・若者の居場所情報サイト
やまねのさんぽみち
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ひなたぼっこ10周年記念原稿より
「学校へ行くより大切なこと」 S.K
中2で「学校へ行かない」と言い出した娘は、6年たった今大学2年生です。家族と離れて一人暮らしをする中で大変なこともありつつ、仲の良い友達に恵まれて、楽しい学生生活を送っています。
学校へ行かなくなり、ずっと家で過ごしていた時の娘は、ふさぎこんでいたり、機嫌が悪かったり私に甘えてきたりで大変でした。ところが中3になって、毎週2回ひなたぼっこに行くようになってからは、毎日が楽しそうでした。水曜日に遊ぶだけでは足らず、会うために火曜日の勉強会に参加し、それ以外の日に約束して遊んだり。家でも先日あったことを楽しそうに話してくれたり、多少の嫌なこともありつつ、次に会うのを楽しみにお菓子を作ったり。仲間がいると、行かない日にもこんなに違うんですね。驚きましたし、本当にありがたかったです。
中学の卒業証書をもらい、全日制の高校に進学しましたが、これも2年の途中で行かなくなりました。この時には「こんな大学に行きたい」というのがはっきりしていたので、2年のうちは家で少し勉強をし、3年の年には予備校へ通いました。受験というものが想像つかない状態で、浪人生と同じ勉強をするのは大変そうでした。でも自分の目標がはっきりしていたので、頑張れたんだと思います。高卒認定から第一希望の国立大学に合格して、今は大学生活を楽しんでい娘を見ると、途中はいろいろあったけど、これでよかったんだなぁと、思えるようになりました。
私が娘と経験したこと、友人たちの話、ひなたぼっこの子どもたちが元気になっていく様子を見ていて、わかった事があります。子どもはみんな、成長したい。そして自分の居ていい場所(否定されないコミュニティー)がほしい。みんな成長する力を持っています。安全な場所でちゃんと休めばエネルギーが戻ってきて自分で動き出します。自分で動いた先に自分の道が開ける、大人はそれを信じて邪魔をしない。
‥‥これが難しい。
子どもが学校へ行かなくなると、ふつう親は焦ります。ふつうに学校へ行ってふつうに働いてふつうの大人になってほしい。子どもを責めます。学校へ戻そうとします。善かれと思っていろいろなことをします。あるいは思い通りにならない子どもを、無視したりとか。ところが子どもはちっともいい方向へ行かない。年齢にもよりますが、ゲーム漬けになったり、昼夜逆転したり、部屋から出てこなくなったり。ネットで知り合った人と電話をしたり‥かと思えばリストカットしたり、暴力を振るったり。
子どもが学校へ行かなくなる理由は様々だと思いますが、子どもは疲れたり、傷ついたりしてもう動けない状態にあります。親が子どもを責める以上に、子どもは自分を責めています。親が将来を不安に思う以上に、子どもは不安を感じています。責めないで下さい。
親や周囲の大人は、理想と現実のあいだに橋をかけようとしてみたり、原因を探して取り除いて以前の状態に戻そうとしますが、多分それはプラスに働きません。親のいろいろな提案は、子どもにとって「あなたは今のままではダメ」というメッセージになりますし、本人も原因はわかっていない場合の方が多いです。仮にわかって周囲を変えられたとしても、子どもがそのコミュニティーに戻るかは別の話。そこに時間とエネルギーを注ぐより効率がいい事があります。
とりあえず、全部を棚上げして
「あなたは今のままでいい」と思うこと。
そうです、難しいです。そんな親、世間はほめてくれません。でも、口だけで言っても子どもは変わらないです。大人が本気で「今のままでいい」と思えたら子どもは確実に変わります。矛盾してるでしょう?本当に子どもは半年で驚くほど変わるから大丈夫。親が考えを変えるのが難しいと思ったら、経験者など分かってくれる人に話しましょう。親の会はあちこちにあると思いますし、ひなたぼっこでも月1回親カフェの日があります。父親は社会に主軸を置いて生きているので、変わりにくいかもしれません。母親だけでも先に変わりましょう。
親が変わると子どもは自分を責める時間が減り、表情が少し明るくなります。でももちろん勉強も手伝いもしません。パジャマ姿でダラダラしたり、テレビを見て笑ったりします。こっちは腹が立ちますが、そこはガマン。そのうちエネルギーが溜まってきて家の中で退屈して「あそこに行ってみたい」とか「こんなことしてみたい」とか言い出します。なるべく叶えてあげる、それに付き合ってみる。その子なりに考えて行動して、結果良かったことも悪かったことも自分で体験して、じゃあ次はこうしてみようと思う。自分のペースで成長する。
大人は口を出さない、これが大切。元気になってきたからそろそろ学校へ‥なんて欲をかかない。次を決めるのも、ここぞという時にふんばるのも、本人です。居心地のいいコミュニティーに出会えれば、子どもはどんどん元気になって行きます。(小中高校の年齢のでは、所属するべきコミュニティーが決められていて、それを変えるのという選択肢が少ないのでかなり苦しいのが日本の現状です。でも、先進国では学校を選べる国が多いんですよ)親がここまでの心境になるには、何年もかかるかも知れません。子どもが外に出て嫌な思いをして、以前の状態に戻ってしまうこともあります。それでも半年前のことを思い出してみてください。子どもはずいぶん前進していると気づくはずです。
本当は学校に行っていなくても、自分を否定せず自分らしく成長していける社会になればいい。でもそれを待てないから、親は今自分にできることを探すしかないのだと思います。
「思い出したらしんどくなっちゃった」
原稿を書きかけた娘がそう言って手を止めたので、替わりに親の立場から書きました。最後まで読んで頂いてありがとうございます。